
赦しの椅子
slow ballad, piano-driven, melancholic strings, restrained female vocal, near-whisper in climax, nocturnal, ambient texture, no drums, sparse arrangement, unresolved ending
imaesan K·7:54

7:54
赦しの椅子
slow ballad, piano-driven, melancholic strings, restrained female vocal, near-whisper in climax, nocturnal, ambient texture, no drums, sparse arrangement, unresolved ending
Creator: imaesan KRelease Date: May 11, 2026
Lyrics
タイムラインが揺れている
画面の向こうで誰かが泣いた
私はコーヒーを淹れ直す
お湯の温度だけが正確だ
毒舌コメンテーター、と書いてあった
入り口の看板に、確かに、太字で
笑いながら投げた刃物が
作品ではなく人間に刺さったとき
それはまだ批評と呼べるのか
それとも私が古いのか
わからないまま、スクロールを続ける
昔なら酒の席で流れた言葉が
今はスクリーンショットで保存される
誰が変わったんだろう
言葉か、皮膚か、それとも私か
この程度で、と思ってしまう私と
この程度で、という言葉で沈む誰かと
同じ画面を見ている五月の夜
正しさの相場が日替わりで貼り出される
私はどちらにも 手を挙げられない
傍観という名の 共犯席に座って
謝罪文のフォーマットは美しく整い
出演取消の文字が儀式のように流れる
再発防止、モデレーター配置、
言葉の消火器が次々と並べられて
燃えていた何かは、もう灰になっている
誰の何が、本当に焼けたのかは
わからないまま
傷ついた人がいる
それはたぶん、本当なのだろう
越えた線もあった
それもたぶん、本当なのだろう
けれど石を投げる手だけが
急に綺麗に見える夜がある
この程度で、と思ってしまう私と
この程度で、という言葉で沈む誰かと
同じ時代を呼吸している五月の夜
被害と加害のあいだに 観客席があって
私はポップコーンを持ったまま
立ち上がるタイミングを 失っている
毒を売りますと書いた店で
毒と薬の線引きが消えて
店主は頭を下げて、毒舌係をクビにする
看板は少しだけ丸くなり
明日もまた、誰かが入っていく
表現の自由という名の
読めない注意書きを眺めながら
誰かを傷つけた言葉を
無罪にしたいわけじゃない
けれど傷つけた誰かを
焼き尽くす拍手にも混ざれない
正しさは今日も満席で
赦しの椅子だけが足りていない
私はまた観客席で
温度の合わない拍手を
膝の上に置いたまま
私はコーヒーを飲み終えて
カップを洗う
正解を持っていない手のひらに
ぬるい水だけが流れていく
明日になれば、誰かがまた炎上する
私はまた、観客席で
拍手も石も持てないまま
画面の明かりを消しそびれている
画面の向こうで誰かが泣いた
私はコーヒーを淹れ直す
お湯の温度だけが正確だ
毒舌コメンテーター、と書いてあった
入り口の看板に、確かに、太字で
笑いながら投げた刃物が
作品ではなく人間に刺さったとき
それはまだ批評と呼べるのか
それとも私が古いのか
わからないまま、スクロールを続ける
昔なら酒の席で流れた言葉が
今はスクリーンショットで保存される
誰が変わったんだろう
言葉か、皮膚か、それとも私か
この程度で、と思ってしまう私と
この程度で、という言葉で沈む誰かと
同じ画面を見ている五月の夜
正しさの相場が日替わりで貼り出される
私はどちらにも 手を挙げられない
傍観という名の 共犯席に座って
謝罪文のフォーマットは美しく整い
出演取消の文字が儀式のように流れる
再発防止、モデレーター配置、
言葉の消火器が次々と並べられて
燃えていた何かは、もう灰になっている
誰の何が、本当に焼けたのかは
わからないまま
傷ついた人がいる
それはたぶん、本当なのだろう
越えた線もあった
それもたぶん、本当なのだろう
けれど石を投げる手だけが
急に綺麗に見える夜がある
この程度で、と思ってしまう私と
この程度で、という言葉で沈む誰かと
同じ時代を呼吸している五月の夜
被害と加害のあいだに 観客席があって
私はポップコーンを持ったまま
立ち上がるタイミングを 失っている
毒を売りますと書いた店で
毒と薬の線引きが消えて
店主は頭を下げて、毒舌係をクビにする
看板は少しだけ丸くなり
明日もまた、誰かが入っていく
表現の自由という名の
読めない注意書きを眺めながら
誰かを傷つけた言葉を
無罪にしたいわけじゃない
けれど傷つけた誰かを
焼き尽くす拍手にも混ざれない
正しさは今日も満席で
赦しの椅子だけが足りていない
私はまた観客席で
温度の合わない拍手を
膝の上に置いたまま
私はコーヒーを飲み終えて
カップを洗う
正解を持っていない手のひらに
ぬるい水だけが流れていく
明日になれば、誰かがまた炎上する
私はまた、観客席で
拍手も石も持てないまま
画面の明かりを消しそびれている
