花火が終わったあとの街は
少しだけ静かすぎて
さっきまで夜を揺らしてた歓声も
川面を照らした光も
最初からなかったみたいに消えていく
人波から外れて
川沿いの細い道を歩く
君の浴衣の袖が
夜風をそっとはらんで
提灯の灯りは
ひとつずつ滲んでいく
湿ったアスファルト
花火の燃えかすの匂い
夏の夜はどうして
こんなにも“終わり”が似合うんだろう
「少し涼しくなったね」
君が笑うたび
やさしい声なのに
胸の奥が少し痛い
永遠じゃないこと
たぶん最初から知っていた
電車の高架を抜ける音
揺れる街の気配
古いフィルムみたいにボヤけた
駅前へ近づくたび
祭りの余韻が遠ざかる
髪についた小さなラメを払って
君は「来年もまた見ようね」と笑う
うなずいたまま
言えなかった
来年という言葉は
時々あまりに曖昧で
季節も人も
気持ちさえも
同じ場所にはいられない
だから花火は綺麗なんだ
一瞬で消えてしまうから
残酷なくらい輝いて
胸の奥で今もまだ
最後の花火が鳴っている