
トトカ湾の氷山
Unknown
Tomekantyou·3:29

3:29
トトカ湾の氷山
Unknown
Creator: TomekantyouRelease Date: January 6, 2026
Lyrics
小さなトトカ湾に巨大な氷山が漂着した。
それはまるで白い帆船のように見えた。
海面下の大きさが想像された。
「かまうな。そのうちとける」
それが村人たちの意見だった。
航行には邪魔だが別に問題なかろう。
「ちょっと待ってください」
若い彫刻家が反論する。
「あそこには氷の女神が埋まっています。
あなたがたには見えないのですか?」
残念ながら村人たちには見えなかった。
それでも若者は諦めない。
「急いで女神を救い出しましょう!」
村人たちは相手にしない。
仕方ないので若者は
たったひとりで氷山を彫り始めた。
「まあいいか。それほど迷惑でもないし」
村人たちは傍観することにした。
朝から槌の音が絶えなかった。
かなり深い部分に埋まっているのだろう。
なかなか氷の女神は現れなかった。
いく日もいく日もいく日も
槌音が休みなくトトカ湾に響いた。
氷山はだんだん小さくなっていった。
ある朝、ついに氷の女神が現れた。
それはそれは美しい姿であった。
神々しいまなざし、豊かなほほえみ。
若い彫刻家は正しかったのだ。
嬉しさのあまり若者は泣いてしまった。
だが、それは一瞬なのだった。
暖かな朝の光を浴び
美しい氷の女神はとけてしまった。
やがて村人たちが家々から出てきた。
あくびをしながら苦笑する。
「結局、みんなとけちゃったな」
村人たちの意見も正しかったのだ。
若者はすっかり疲れ果て
いまにも溺れそうだ。
