[Prelude|無音の核]
音はまだ存在しない
ただ一つの鍵盤が、宇宙の呼吸を模倣する
空白は落下しているのに、落ちる先がない
微弱なピアノ
それは「始まり」という錯覚の残響
[Verse 1|星間微光]
触れない光が、指先を通過する
弦は震えずに、記憶だけを揺らす
誰もいないはずの空間で
誰かの声だけが遅れて届く
意味のない和音が
静かに重力へ変わっていく
[Ethereal Choir|無言の合唱]
(la… ʟa… ɭa…)
言葉以前の声が、輪郭を失って漂う
天体の内側で
祈りだけが音になり損ねている
[Build|歪む軌道]
金管が、秩序を思い出そうとして失敗する
不規則な打撃音が時間をずらす
電子の脈動が増殖し
調和は光とノイズの間で揺れる
もうどちらが現実か、判別不能
[Drop|宇宙衝突]
全てが同時に鳴る
オーケストラは崩壊ではなく拡張へ
トランスシンセは重力を裏返す
合唱は個体を失い
ひとつの巨大な意識へ収束する
衝突は終わりではない
むしろ「統一の誤作動」
[Climax|融合点]
低音が宇宙の核を押し上げる
広がる和声は境界を消去する
君と僕の区別は
周波数の差としてのみ残る
すべては同時に
一つでもあり、無でもある
[Afterglow|崩壊した記憶]
音は再び壊れる
だが壊れ方だけが美しく進化している
冒頭のピアノが戻る
しかしそれはもう同じ鍵ではない
[Outro|未収束]
遠くで、まだ何かが鳴っている
それが終わりなのか、残響なのかは不明
ただひとつ確かなのは
宇宙はまだ、結論を出していない