夜明け前の空がゆっくり滲んで
冷たい風が指先をかすめていく
眠らへん街の奥で誰かが咳をして
その音だけが静けさを割った
古いアパートの階段を降りるたび
鉄の匂いが胸の奥に残って
昨日の夢がまだ足元に絡んで
ほどけへんまま朝へ引きずられる
駅前のベンチに座るおっちゃんが
小さな紙袋を抱えたまま動かへん
その横を通り過ぎる人らの影が
まるで別の世界の住人みたいやって
信号の青がゆっくり変わるたび
胸の奥で何かが揺れた
言葉にならへん思いが
喉の奥で静かに沈んでいく
川沿いの道を歩くと
水面に落ちた光が揺れて
その揺れが心の奥のざわめきと
同じリズムで震えてたんや
誰もおらへん橋の真ん中で立ち止まり
遠くの車の音を数えてみる
一つ、二つ、三つ
そのたびに胸の奥の重さがちょっとだけ薄れた
古い自販機の前で立ち止まり
冷たい缶を手に取る
その重さが妙に現実的で
今ここにおることを思い出させた
路地裏の壁に貼られた古いポスターが
風に揺れて破れかけて
その断片が空に舞い上がるんを
ただ黙って見送った
夕暮れが街をゆっくり飲み込んで
建物の影が長う伸びていく
その影の中を歩きながら
自分の足音だけを頼りに進んだ
夜が完全に落ちる頃
街灯の下で息を整え
胸の奥に残ったざらついた感情を
そっと両手で包み込んだ
誰にも届かへん声が
心の奥で小さく揺れて
その揺れが消えへんうちに
また一歩、前へ進んだ